ICE アイ・シー エンジニアリング株式会社

Project Episode 「開拓者」たちのプロジェクト

Project Episode 04 車両組立工場建設(チュニジア)

チュニジア…それ何処ですか?
2014年の暮れに引合をもらったのはチュニジアの自動車工場からだった。 直ぐに地図を見てチュニジアの場所を調べ、日本から遠く離れたアフリカ大陸にその国を発見した。 そもそもこんなに離れた場所で日本のトラックが生産されていることが驚きだった。

2015年1月、山本はチュニジアに飛んだ。アイ・シー・エンジアリング社員の中で初となるチュニジアへの出張者となった。 中東を経由して北アフリカへと、移動時間は20時間を優に超える。チュニジア国際空港に到着するとアラビア語やフランス語の表記が大半を占め、 英語の表記が少なく若干の不安はあるものの空港はコンパクトで迷うことはなかった。 書きなれていない入管書を書き入管を出ると既 に現地に支店を置く商社の方とお客様が迎えに来てくれていた。 挨拶もそこそこに空港から直接お客様の待つオフィスへと向かった。
アフリカで一番のトラック組み立て工場を作りたい。
客先のオフィスに着くと面談者は社長と副社長だった。 開口一番に与えられたミッションは「アフリカで一番のトラック組み立て工場を作る」ことだった。 通常、エンジニアの面談相手は相手先の技術者であることが多いのだが、いきなりの社長の登場には正直面食らった。 よくよく聞いてみると社長はエンジニアとしてのバックグラウンドを持ち、 更に元チュニジア代表のサッカー選手というなんとも不思議な人物であったが、 チュニジアに最先端の工場を作りたいという情熱は十分に伝わってきた。
アメリカへの出張
チュニジアでの打ち合わせ、既存工場の見学を終えると次に向かったのはアメリカのミシガン州。過去に山本自身が工場の立ち上げに参加した場所だ。
実はチュニジア出張時に副社長よりアメリカのミシガンにある工場のコピープラントをチュニジアに作りたいと依頼されたのだった。
アメリカには日本にも退けをとらない最新の設備とそれを十分に活用できる技術がある。 自身が参加したプロジェクトであったもの、別の視点を持って 工場見学をすることは多いに勉強になる。 又、自身がプロジェクトを担当したメンバーが暖かく迎えて入れてくれたことにも感謝だ。
再びチュニジアへ…山の天気は変わりやすい?
アメリカからの帰国後、トラック組み立て工場に必要となる主要設備の見積もりや新工場のレイアウトは全てまとめ提案書にした。 万全の準備をして再度チュニジアへ向かったはずだった…前回同様、社長と副社長と打ち合わせをし提案書の内容を説明するも反応が悪い。 それどころか社長の機嫌がみるみる悪化していく。終いには「この国で最新の設備を導入すれば、若者の雇用を奪うことになる。 君の提案を受け入れることは出来ない!」とまで言われ見事に提案は却下されたのだった。 海外で仕事をする場合に必ずしも思い通りにならないことはあるが、あまりにも理解できず食いさがるが 「今日はもう話すことは無い」と社長に追い打ちをかけられ撃沈。
海を見て気分転換
予定よりも打ち合わせが早く終わってしまった。こんな時程、内にこもってはならない。 車を30分ほど走らせて地中海が見えるレストランでゆっくりと昼 食を取った。グリルされたスズキは美味だった。 レストランからホテルに戻る最中、山本が気になっていたのは「若者の雇用」という社長の言葉だった。 事実、 生産工場における効率化や自動化は雇用の削減に直結するからだ。雇用を確保しながらも製品精度を 向上しトレース機能をも持つ事が唯一の突破口だった。
ホテルに戻ると山本は徹底的に提案の内容を見直した。品質に大きくが差が出ない工程の自動化の設備を 全て手動のものにし、それぞれに推奨される運用方法を模索したのだった。
その想いをカタチにする情熱
一夜明けて、時差ぼけと睡眠不足で頭がボーっとする中、朝一番で客先へ足を運び打ち合わせに臨んだ。 社長の機嫌はあまり回復していない様子だった。 山本は昨日、知恵を振り絞って作成した提案を必死に説明した。あまり期待はしていなかったが、社長から告げられた言葉は「いい提案だ」だった。 それは山本が日本の技術者として、又、客先からパートナーとして認められた瞬間だった。

最新の高機能設備が万人に受け入れられるものでは無い。その国の環境や状況に応じて最善は変化するものだ。 先ずは相手の希望や条件を深く理解した上で最良の提案を行なう為に知恵を絞り工夫する。 その姿勢や情熱が相手に伝わった時、その想いはカタチになる。

Idea to Reality